看護師という生き方

看護師はたくさんの人に出会えます。色々な人生を知ることができます。

「人間」というものの脆さや奥深さを知ることができます。それは、面白くもあり、悲しくもあり、切ないものでもあり、楽しいものでもあります。人の人生を通して自分の人生の学びができます。

過去の経験から学んだことをお伝えします。

整形外科、内科混合病棟でのこと。

★反抗ばかりしていた娘が友達の車に乗っている時に交通事故にあい、ケガをして入院してきました。反抗期の娘は、頭を打った影響で幼児のようになってしまいました。

幼児に戻った娘は母親べったりになりました。ベットサイドにいる母親の腕に自分の腕を絡めてじゃれてばかり。反抗していた自分を覚えていないようでした。娘の相手をしている母親の微笑みは苦笑いのようにも見えました。反抗期で悩んでいた母親は、「ママ」と慕う素直な娘に接するのは嬉しかったと思います。しかし、この先も幼児のようであればどうなるのか、娘の未来を考えると複雑な思いだったのでしょう。

★交通事故で頭を打った後、ベットサイドの妻に、やくざのような口調で「おっぱいを触らせろ」といった男性。妻は、それまで優しく穏やかだった夫の豹変に、ビックリして泣き出してしまいました。頭を打った方は、一過性に人格が変わることがありますと伝え、安心してもらいました。実際、時間の経過でそのようなことはなくなりました。

★全身清拭で自分の陰部を露出した時に、看護師の反応を見て楽しんでいる男性患者さんもいました(その時の私は20代でした)。道路で陰部を出している男性のように、「どうだ!」と言わんばかりに少し微笑んでいます。気色悪いですが、平気な顔をしてサッサと仕事をします。そこで、少しでも狼狽えたりしたら、面白がられてさらにやられるのが目に見えます。

死に直面した時

看護師の仕事は、多くの人の死にも直面します。

これはいつまでたっても慣れることはありません。

働きざかりである40代の男性の死期が迫った時の看護は、きつかったです。段々顔色が悪くなり状態が悪くなる姿を目の前にして、胃がキリキリと痛くなりました。

死後の処置を行っている時は、40代の男性はまだまだ働き盛り、残された家族の辛さに思いを馳せました。

しかし、その一方で感情を遮断している自分もいました。

悲しみに沈んでいると他の患者さんのケアができません。

死に直面し、感情を大きく揺さぶられているのに何事もなかったように振る舞う難しいことを求められます。

どのように感情をコントロールし切り替えるのか、上手くできない医療関係者もいます。

死にゆく患者さんに感情をいれないようにしている人もいるようです。

患者さんの家族から、医療関係者は冷たい、死期が迫っているベットサイドで、医師がスタッフに「焼肉を食べにいこう」と話していて腹がたった、という話を聞いたことがあります。

しかし、冷たいのではなく、辛すぎて感情を遮断している防衛反応だと思います。

患者さんの家族の方ごめんなさい。

この心情をわかってください。

私達も死はつらいのです。

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病院では、不思議なことがいっぱい起きます。 大変なことももちろんありますが、楽しいことと、嬉しいことも沢山あるので、続けられる職業だと思います。

そして、段々看護師っぽくなっていきます。

排便のことを話しながら食事をとれるようになります。それがいいことかはわかりませんが…。

看護師っぽいものの見え方にもなっていきます。

場違いなものであるほど目が吸い寄せられる

そんな自分を自覚しものすごく滑稽に感じる

にもかかわらずその場での行動には何ら影響がない

「心肺蘇生をしているベットの隣で、桃の缶詰にうんこをしていた認知症の女性の話」

真剣に心肺蘇生に取り組んでいる時に、ものすごくおかしな現実(女性が缶詰にうんこしている)を横目で確認しても、何事もないように心肺蘇生に集中できる。

看護師あるある。宮子さんの本は面白いです。

あなたも看護師ワールドに入ってみませんか?

じゃまたね。

場違いなものであるほど目が吸い寄せられる。看護師あるあるです。 これは職業病なのでしょうか、それともそのような性格の人間が看護師になるのでしょうか。どちらでしょうか。

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ところで、現在患者さんの意識も大きく変わりました。

損をさせられることに極めて敏感、損をさせられたくない。 

権利意識が強まるにつれて学生の受け持ちを拒否する人が増えたようで、多くの看護教員や病棟の管理者が受け持ち患者さん選びに苦労しているそうです。

「何よりまず安全第一の今では学生の医療処置は NG 。そして学生の受け持ちを自ら希望する人なんて、今や絶滅種ですよ。 この根底にあるのは常に安全と患者さんの権利が重視される結果現場で人を育てにくくなっている。今では学生だけではなく新人看護師も寄せ付けない患者さんもいます。 」

うーん、新人の時がないベテランはいなくて。患者さんに育てられて成長するのが医師や看護師など医療職だと思います。どうか、未来を支える看護師を温かく育ててほしいです。お願いします。

Profile

大友光恵
大友光恵
大学講師 ( 公衆衛生看護学)
興味関心は、母子支援のための病院と地域の連携、看護職のモチベーションアップ、女性の生きる力を引き出すこと。
大学講師 ( 公衆衛生看護学) 興味関心は、母子支援のための病院と地域の連携、看護職のモチベーションアップ、女性の生きる力を引き出すこと。