女子高生の裏社会-関係性の貧困-

私がJKビジネスに関心をもったのは、「パパ活」を気軽で儲かるバイトのように話してくれた学生からの情報だった。

一緒にお茶するだけです、と。

何もしないの?それで何万円ももらえるの?危ないことはないの?
 

畳みかけるように尋ねる私に

彼女は「危ないことはないですよ~」明るく答えた。

本当にそうなのだろうか?かわいい若い女の子がデートしてくれるだけで、何万円も出す大人がいるのだろうか? 
 

その疑問から、情報を集めるために読んだ本をご紹介。

女子高生の裏社会「関係性の貧困」に生きる少女たち,仁藤夢乃,光文社新書,2014年.

今、家庭や学校に何らかの問題を抱えているわけではない少女たち

両親との仲も学校での成績も良く、受験を控えているような普通の女子校生が、 JK リフレ( JK 女子高生によるリフレクソロジー=個室でのマッサージ)や JK お散歩(女子高生と客との デート)の現場に入り込んでいる。

  • 目次
  • 困った時に相談できる大人がいない少女たちを狙う
  • 少女たちを離さない裏社会の大人たち
  • 待っていても来ない

 困った時に相談できる大人がいない少女たちを狙う

2014年米国務省人身取引に関する年次報告書で、 JK お散歩が日本の新たな人身売買の例として示された。日本では、未成年の子供達を使った売春ビジネスが横行している実態が報告された。 2013年12月 JK お散歩の少女は補導の対象になると、女子高生と男性をつなぐ新たな形態が誕生

簡単には止められない

やめたいと思っても客に止めないでと頼まれたり、店に君が必要だと言われたりすると断れない。他での関係性を持っていない彼女たちに、今まで築いた関係を壊すことは容易でない。

 JK リフレやお散歩で働く少女達のほとんどは自分を支援の対象だとは思っていない

 少女たちを離さない裏社会の大人たち

裏社会の大人たち -スカウト, 店, オーナー 三者による連携で少女たちを離さない

  1. スカウト

町で少女に声をかける。 その多くが 風俗嬢のスカウトも担っている20から30代の男性。 彼らは若者の流行に敏感で、年代や季節等による少女の傾向を把握し、少女の状態や状況にあった店を紹介していく。店に少女を紹介すると5万円から15万円程度の収入になるため、少女に何度もアタックし、こまめに連絡をし、店につなぐ努力を惜しまない

店長は少女との関係性づくりをして店を彼女達の居場所にする。 少女の話を聞き励まし褒めて親戚のおじさんみたいな関係を築き上げる。脅して管理することもあるが、基本的には彼女達と良い関係を作り彼女たちに居心地の良さを与える。リーダーになりそうな少女には、少女のまとめ役や監督を任せたり、過ごしやすいルールを自分たちで作らせたり、客が喜ぶオプションを考えさせるなど店の運営に関わらせ、やりがいやプロ意識を持たせる

  1. オーナー

系列店を持っているたまに現れるオーナーは、少女に君頑張ってるね期待してるよ、と声をかけ、喜ばせる

トラブルがあった場合、店長がスカウトにフォローを頼む。 そのためちょうどいいタイミングでスカウトから少女に連絡が来る。スカウトは、彼女たちをなだめたり、店長に俺からさりげなく言ってやるから頑張れと言ったり、必要に応じて別の店を紹介する。紹介先は同じオーナーが経営する店で、少女はその中をただ泳がされているだけ。 こうして彼らは少女たちを取り込み、一度足を踏み入れると抜け出しにくい連携体制を作っている。連携するためスタッフ会議や他店の店長会議や交流会も行われている。

マニュアル化声のかけ方や関係性の作り方、少女のモチベーションの保ち方やトラブル発生時のケアまでマニュアル化され受け継がれている。JK 産業から抜け出すことを少女たちは卒業と呼ぶが、卒業という目標やモデルを見せることで、彼女たちはモチベーションを保っている。 そして裏社会は卒業後も系列の風俗店で少女達の面倒をみる

待っていても来ない 

誰にも頼れず自分一人でどうにかしようとした結果、 JK 産業に取り込まれていくような少女は、行政や弱者支援者が窓口を開いてるだけでは自分からは来ない。引きずり込もうとする大人たちはお金や生活に困っていそうな少女を見つけて日々声をかけ出会って仕事を紹介し、力を入れている。

少女たちに必要なのは、社会保障や支援に繋いでくれる大人との出会いや関係性。行政も民間も支援を必要としている人に声をかけていかなければならない。 裏社会のスカウトは少女を最後まで見捨てない。少女の生活と成長をサポートし続ける。行政や民間は支援機関につないだら終わりという関係性や制度が多い。

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簡単にJKビジネスに入らせてはいけない。抜けなくするための仕組みが出来上がっている。

一見優しい人たちに思えるが、商売のために心の淋しい少女達を引きずり込む。女子に正しい情報を伝えていかないといけない。

支援が必要な人は、待っていても来ない。

困っている10代の少女たち、待っていてもこないのであれば、キャッチする仕組みを考えないといけないであろう。行政だけではできないのあれば、NPOなどと連携していく仕組みが必要ではないか。

関係づくりは一筋縄ではいかなそうである。必要なことは「めげない」「あきらめない」こと。連携しておせっかいおじさん、おばさん軍団をつくっていかなければと思った。

女子高生の裏社会「関係性の貧困」に生きる少女たち,仁藤夢乃,光文社新書,2014年.

Profile

大友光恵
大友光恵
大学講師 ( 公衆衛生看護学)
興味関心は、母子支援のための病院と地域の連携、看護職のモチベーションアップ、女性の生きる力を引き出すこと。
大学講師 ( 公衆衛生看護学) 興味関心は、母子支援のための病院と地域の連携、看護職のモチベーションアップ、女性の生きる力を引き出すこと。