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課題研究


2020年~2024年度:
科学研究費補助金 基盤研究(C)課題番号20K10894

研究課題名
産科看護職を対象とした虐待発生予防に向けた看護実践の意識化プログラムの開発

研究代表者
前聖徳大学看護学部 講師 大友光恵

研究分担者
埼玉県立大学看護学部 特任教授 鈴木幸子

研究協力者
長野県立大学グローバルマネジメント学部 教授 宮崎紀枝

現在、論文投稿準備中

「虐待発生予防のためのプログラム」を計画。効果を検証するため、全国の産科看護職の皆さまに研究のご協力をお願いいたしました(2022年5月)。北海道から九州の産科病棟勤務の看護師、助産師の皆様にご協力いただきました。ありがとうございました。2024年5月

プログラムは2つのグループに分けて実施しました。Aグループの方には2022年7月に講義の動画を送らせていただき、オンラインで2回グループワークを実施しました。グループワークについて研究協力者の皆様から「参加して良かった」と感想をいただきました。

【研究の背景】

1.日本の子ども虐待発生予防の取り組みと課題

 日本では、経済的困難など社会的ハイリスクの母親や妊婦健診未受診、飛び込み出産の増加、0歳児の虐待死亡事例が問題となっています。国は対策として、妊娠期からの特定妊婦の支援、子育て支援包括支援センターの設置、赤ちゃんの全戸訪問、妊娠期からの養育支援ネットワーク構築などを推進しています。そのため医療機関から保健機関へ虐待予防の連絡票を送る地域が増えています。しかし、虐待発生予防に必要なのは、早期発見だけではなく、その後、継続した支援につなげることが必要です。ここで課題となるのは、保健師の家庭訪問など関係機関の関与を拒否する母親です。

2.医療機関から保健機関へ情報を提供すれば虐待発生予防の支援ができるのか?

 先行研究では、産科看護職は、虐待発生予防の支援が必要な母親を把握した後、母親との信頼関係を活かして保健師が拒否されないように橋渡しをしたり、保健師とタイムリーに情報交換したりすることで「継続的」、「重層的」かつ「機を逃さない」支援をしていました。重要なのは「重層的」かつ「機を逃さない」支援であり、これにより虐待発生予防につなげていました(大友ら、2013)。このことから、産科看護職は虐待発生予防の重要な役割を担っており、上記の支援ができる看護実践の習得が必要だと考えます。

3.産科看護職の虐待発生予防に向けた看護実践の自信のなさと迷い

 産科看護職は、心理的・社会的な問題を抱える母親を「なんとか救いたい」という気持ちは強いです。しかし、どのような看護実践が良いか迷ったり、「何か気にかかる」母親に気づいても自信がないので誰にも報告しない人がいたりすることが明らかになりました。研究代表者は、「虐待発生予防に向けた看護実践」の可視化を目指し、「信頼関係の構築」「育児支援必要度の査定」「チームケアの実践」「多職種支援体制のための調整」が必要であることを明らかにし、「子ども虐待発生予防に向けた看護実践自己評価尺度(以下、NES-CMPとする)を作成しました(大友ら、2018)。

4.成果が見えない虐待発生予防の看護実践を促進するための「意識化」

 成果を達成するには、必要とされる課題やプロセス、目標全てを「意識化」することが必要です(古川,2010)。虐待発生予防に向けた看護実践の成果は見えにくい。だからこそ、プロセスなど全てを「意識化」することで、役割の自覚をもち、看護実践の質の向上を図ることができると考えました。そして、それが虐待発生予防の成果を生み出すと考えました。

【文献】

  • 大友光恵, 麻原きよみ. (2013). 虐待予防のために母子の継続支援を行う助産師と保健師の連携システムの記述的研究. 日本看護科学会誌, 33(1), 3-11
    DOI https://doi.org/10.5630/jans.33.1_3
  • 大友光恵. (2014). 虐待発生予防に向けた地域連携に関与する産科看護職のモチベーションの構成要素. 母性衛生, 55(2), 426-433.
  • 大友光恵, 斉藤恵美子. (2018). 子ども虐待発生予防に向けた看護実践自己評価尺度 産科病棟看護職版の開発. 日本看護科学会誌, 38, 210-218.
    DOI https://doi.org/10.5630/jans.38.210
  • 古川久敬編,人的資源マネジメント「意識化」による組織能力の向上,白桃書房, 2010.
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